▽エピソードその十一▽

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「大丈夫さ。そのかわり、ミサちゃんの写真を送ってくれない?毎日眺めておくから。」 「デッサンの写しがあるんでしょ?」 「生写真の方が絶対にいいに決まってる。」 「考えておくわ。」 一瞬会話が途切れるかと思ったが、ミサはボクの友人の話を切り出してきた。 「ねえ、今日来たお友達って、同級生?」 思わぬ展開に少しドキッとしたが、 「高校時代のね。なんか気に触るようなことがあった?」 「彼はとてもエッチね。触ったりはなかったけど、おっぱい見せてっていうの。見るだけならいいでしょって。お友達の彼女のおっぱい見て楽しいの?って聞いたら、それはそれで興奮するって言うの。あの人ってもしかして変態?だから店長に言って二回目は避けてもらったんだけど。」 「スケベな野郎だな。昔からそんな感じはあったかも。友だちの彼女か、やっぱりちょっと興奮するかな。不倫な感じはするけどね。」 「えええ?男の人ってみんなそうなの?」 「そうかもしれないよ。ホントに触ったりしちゃいけないけどね。」 ミサはしばらく考え込んでいたが、 「アッくんを他の女の人に近づけないようにしなきゃね。」 「大丈夫さ、その友だちももう一人の友だちも、今は彼女なんかいないし、いても興味なんか湧かないよ。」 すると彼女はドリンクホルダーにあった缶コーヒーを見つけて、 「これ飲んでいいの?」 「あっ、忘れてた。ミサちゃんのために買っておいたんだよ。飲んで。」 そういえばボクの分もまだ開けていなかった。 ミサは少し喉を潤して、すうっと深呼吸をしていた。 「試験が受かって、ちゃんと就職できて、それで私の勤務地が遠かったらどうする?」 「何ヶ月かに一度は会いに行くよ。毎週なんて無理だけど、ボクはドライブが趣味なんだし、名古屋ぐらいまでなら一つ飛びさ。だから今は試験のことだけちゃんと考えて頑張ってくれればいいんだよ。」 「うん。だけど、アッくんに転勤はないの?」 「ないことはない。なんかよっぽどのドジを踏んだら地方へ飛ばされるかもしれないけど、今のところは昇進するときぐらいじゃないかな。何年後のことだろう。」 「アッくんの誕生日っていつ?」 「四月だけど。」 「後もうちょっとね。コッチに残ってたらお誕生日会してあげる。」 「残ってなかったら押しかけるよ。だから、自分にリボンをくくって待っててね。」 「うふふ。エッチね、アッくんも。」
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