▽エピソードその十一▽

11/11
前へ
/130ページ
次へ
たった数十分の道のりだけど、誰にも邪魔されない空間で二人だけの時間なんて初めてだったし、とっても楽しかった。 ミサの自転車は駅の裏手の駐輪場においてあった。 「ここから何分?あんまり時間がかかるようだったら家の前じゃなくて近くまで送って行くけど。なんかあったら心配じゃん。」 「大丈夫。自転車なら三分だから。いつもお店の人に送ってもらってるのもここだから。それよりも、試験に合格できるように祈っててね。」 「うんわかった。気をつけてね。」 「アッくんも。帰りの運転気をつけてね。」 ボクは立ちこぎで自転車を操りながら背中を向けたまま小さくなっていくミサをずっと見送っていた。 ミサの試験日まであと十日あまり。 それまでは彼女からの連絡が来るまで待つしかない。 月は・・・・・・。
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加