▽エピソードその十三▽

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ボクの先遣隊は丘陵への挨拶と探索をゆっくりと行い、背中のゲレンデをすべるように降りてくると、彼女のウイークポイントへと行進していく。先遣隊がウエストラインに辿り着くと同時にビクンと震える体を確認し、その反応を充分に楽しんだ後、やがて双子の山にたどり着く。そこで弾力のある渓谷へ繋がる断崖絶壁を見つけると、さらには絹のような肌触りをした林道をも発見する。時には指で、時には掌でその感触を確かめていく。 唇への挨拶も忘れない。そして何度目かの丘陵の頂点への挨拶を終えたとき、彼女のお許しのお言葉が下賜された。 「きて。」 たった二文字の、そして重要な言葉がボクに決心を促した。 ボクは言葉なく、自身の剣を洞窟へ挿し入れる。同時に祠から呻くように聞こえるこだまのような精霊の声。 ゆっくりと、時には激しく、彼女の全てを感じられるように時間を使った。後部からの探索も行った。彼女を上にしての探索も行った。その全てが素晴らしかった。 ボクはある衝動に駆られて、 「ちょっと歯を当ててもいい?」と言うと、 「うん。」と返ってくる。 丘陵の頂点にある石碑を軽く噛んでみると、 「あん。」 コリッという感触と共に聞こえてくる女神の嗚咽が聞こえる。 何度か体が入れ替わり、彼女が上にいたとき、ボクの耳元でそっとささやいた。 「私も歯を当ててもいい?」 不思議に思ったが、「うん。」と答えると、彼女はボクの首筋に唇を這わせ、耳元とうなじ辺りでスッと歯を当てた。
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