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それでも人気があるのか、仕入れが足りなかったのか、今年の日本酒フェアは例年よりも早くに終了した。
「お疲れ様でした。」
得意先の部長に笑顔で送り出された後、ボクは東京へ戻る電車に飛び乗った。
「思いのほか早く終わったな。さて、帰るには少し早いし、どうしようかな。」
そしてあることに気付くのである。
「今日は日曜日だ。ミウちゃんがいるはずだ。」
時計を見ると午後四時。いまから新宿へ向かうと、丁度二時間ぐらいで到着しそうだ。
そう、『ピンクシャドウ』の開店時間である。ボクは急ぎ足加減で駅へと向かい、そして新宿行きの電車に乗り込むのだ。
ちゃんと鞄の中にお土産を仕込んでいることも自覚しながら。
すでに霜月となっている夕方は、日が落ちるのも早い。
ボクが新宿に到着する頃には、もはやネオンなしでは繁華街の店さえも判別できないほどの宵となっていた。
駅を降りて歩くこと数分。メインストリートの少し外れにその店はある。一人でかような店に訪問するのは初めてだったこともあり、ボクの心臓はバクバクしていた。
顔見知りはいないだろうか、特にケンさんやヒデとは絶対に顔を合わせたくなかった。
まあ、案ずるより産むが易しである。結果的にボクはこの店で彼らと出会うことは無いのだが、その理由はまた後日談として、ボクはルンルン気分で階段を昇る。
すると見覚えのある看板と見覚えのあるドアがそこにあった。ドアを開くと見覚えのあるボーイが立っている。
「いらっしゃいませ。ご指名がありますか?」
ボクは迷うことなく、「ミウさんをお願いします。」と答えていた。
すると、「コチラでお待ち下さい。」と言われて案内されたのは待合室であった。
その部屋にはテレビと漫画がぎっしりと詰まった本棚が設置されており、オープンまでの時間を何となく過ごせる空間となっていた。その空間を見渡すと、ボクと同様にオープン前から押しかけている輩が三人、ボクを見上げるようにベンチに腰かけていた。
この日に出勤する女の子は五人。誰がどの女の子狙いなのかは全くわからない。同じ女の子を指名した場合はどうなるのだろう。そんなことを考えながら、オープンまでの時間を過ごしていた。
そしてテレビに映っていた時刻が六時を示した時、店内の音楽が流れ始めた。開店時間である。同時にやや緊張した雰囲気になるのである。
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