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待合室の客は、先着順に店内のフロアに誘導され、指定されたシートへと案内される。
そしてボクの順番がやってきた。案内されたシートは一番手前の通路の前から二番目のシートであった。
後で聞いたところによると、複数の指名があった場合、その客は手前の通路から順に、なるべく離れたシートに座らされるらしい。確かに、お気に入りの女の子が他の客に抱きついている姿は見たくないものだと思う。
つまり、ボクの指名した女の子は先客たちの指名の女の子とは違うということである。
そして、彼女がボクのシートに現れる。
「こんばんわ。こんなに早い時間に誰かと思った。こんなに直ぐに来てくれるなんて、ホントにうれしいです。」
「今日は仕事だったんです。埼玉でイベントがあって、その帰りなんです。」
「うふ。」
彼女は、言葉少なのままにボクに抱きついて唇を提供してくれる。
そして思い出す彼女の香り。
しばらくの時間、ボクは彼女の体を引き寄せて甘い香りを楽しんでいた。ネットリと絡みつく感触とぬくもりは、たった数日間であるにもかかわらず感じていた淋しさを取り払ってくれる。
やがてゆっくりと体を離して、互いにニッコリと微笑みあう。
「今日はお土産があるんです。」
ボクはそう言って鞄の中から小さな袋を取り出した。
「もしかして、誕生日は過ぎましたか?」
「そうなんです。実は先々週だったんです。」
「そんな頃かなと思いました。ホームページの年齢が二十一歳になっていたので。」
「そんなとこまで見てくれたんですか。すごいですね。」
「ゴメンネ、ミウちゃんのこと凄く気になったからプロフィール全部見ちゃった。」
「ちょっと恥ずかしい。」
そう言って照れる表情もすごく可愛い。素直にそう思った。
「それでね、誕生日プレゼントは大袈裟だけど、一応お近づきのしるしってことで。」
ボクは袋を彼女に手渡した。
「うれしい。開けてもいいですか?」
「もちろんいいですよ。」
彼女が袋を開けて取り出したのは、日本酒の成分が入ったフェイスパック。先のイベントで製造元が開発した商品である。こういうこともあろうかと、彼女のために購入しておいたのである。彼女には内緒だが、身内ということで少し安くしてもらったけどね。
「うわあすごい。いつもこういうの使ってるんです。良いのがないかいつも探してるんですよ。どうして知ってたんですか?」
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