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「なあアキラ先生、世の中には女の肌ほど心地よいものはないぜ。あんなスベスベしてもっちりして、尚且ついい匂いがする。いい女ほどいい匂いがするもんだ。」
などとうそぶく。
ボクだって嫌いじゃない。すでに高校生のうちに童貞を卒業していたぐらいだから、どちらかといえば好きかも。
「おまいさんももっと積極的に恋をしなきゃ。若いうちに遊んでおかなきゃ、そのうち変な女に引っ掛かって、人生をおじゃんにしてしまうぜ。」
「今は急がなくてもいい。どうせオレなんかはすぐに飽きられるんだから。」
「おまいさんさんの何がつまらないのか教えてやろうか。それはな、アキラがいいと思っている優しさが、実は女の子が求めてる優しさとは違うってことだよ。もっと狼になっていいのさ。もっと強引になっていいのさ。デートも食事も、いつも彼女の言いなりだろ?それがつまんないんでないかい?」
「そんなこと言われたって・・・。」
「あのさ、週末にさ、いいとこ連れて行ってやるよ。そこで勉強しな。」
「なに?」
「いいからいいから。楽しみにしておきな。ただし、多少の軍資金は必要だぜ。とりあえずは大が二枚もあればいいかな。」
「いったいどこへ連れて行こうっていうの?怪しいところなんか行かないよ。」
「怪しくなんかないさ。まあ週末楽しみにしておいで。」
そんな話をしているうちに電車のドアが開き、スッと外気が入ってくると同時に人の波がどっと湧き出だしてくる。
ボクたちもあっという間にその波に飲まれる様に一旦外へと弾き出された。
ヒデはココで降りるが、ボクの降りる駅はもう少し先にある。
「じゃあ、週末にね。連絡するから。」
そう言ってヒデは流されるようにホームに渦巻く人ごみの中へ消えて行った。
ボクは想像してみる。
今までに何度か怪しげな店に誘われたことがあった。けれども結果的についていくことはなかった。ボクは全くの草食男子となっていたのである。
やがて電車はボクの職場近くの駅に到着し、またぞろ忙しい一日が始まるのである。
そしてその週の金曜日、思い出したようにヒデからのメールが入る。
―本日約束通り決行につき、『ロッキー』にて十九時集合のこと。―
はっきり言ってボクはヒデとの約束なんか忘れていた。
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