▽エピソードその二▽

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「ゴメンネ。ちょっと行って来る。」 そう言って彼女はボクのシートを離れる。 どうやら他のお客さんのシートへと移ったようだ。ボクの他にも彼女を指名した客が来たのだろうかと思ったが、それは違っていた。 こういう店では『ヘルプ』と言って複数の指名を受けた女の子が渡り歩いている間に、その隙間を埋めるため、指名の少ない女の子がお手伝いに行くシステムと女の子を指名しないで『フリー』として入った客への顔見せする時間が設けられている。 今回彼女が席を立ったのは『フリー』客への顔見せだった。その客が彼女を気に入れば、次のセットからは指名客となるのだが、どうやらその客は別の女の子を指名したようだ。 つまり、彼女は割りと直ぐに戻ってくるのである。 「ただいまあ。」 「おかえり。キミがいない間は淋しかったよ。」 ボクは直ぐに彼女を抱きしめる。 彼女も無条件でボクに唇を与えてくれる。 そして次のアナウンスが流れていたのだが、そろそろボクの耳にもアナウンスの内容が聞き取れるようになっていた。どうやら延長を促すアナウンスのようだ。 「アッくん、時間が来たって。」 「それで?」 ボクは少し意地悪な言い方で彼女に延長の催促をさせた。     
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