▽エピソードその三▽

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「実はな、あの店のお気に入りの女の子が今度、一緒に酒を飲みに行ってくれるって言うんだ。しかもおいしい日本酒じゃないと嫌だときたもんだから、アキラ先生に相談させていただいたという訳さ。」 「へえ、そんなことができるんだ。すごいね。」 「まあ、まだ確定したわけじゃないけど、リサーチはしておかねばな。ようは、仲良くなると、そんなデートもできるかもしれないっていうことさ。」 「それって下心丸出しじゃないの?」 「もちろんそうさ。ぐへへへ、きっといいことが起こりそうだ。そんな予感がするんだ。」 「お店の女の子って、そんなに尻軽なのかい?」 「そうかも知れない、そうじゃないかも知れない。イチイチそんなこと考えてたらデートなんて誘えないさ。」 「ケンさんも女の子とデートしてたりする訳?」 「ああ、もう何回もしたって聞いたぜ。アキラも誘ってみれば?そういえば、あれからあの店には行ってみたか?」 「いや、行ってないよ。オレには不向きだって言っただろ。」 「ホントはさ、オレなんかよりもアキラの方がデートできる可能性はあるような気がするんだ。なんたっておまいさんはオレと違ってジェントルだからな。」 「それが過ぎるっていう理由で何度も振られたことがあるぐらいね。」 「どうだ、今夜のココはオレが奢るから、終わったら一緒に行かないか、『ピンクシャドウ』に。」 「遠慮しておくよ。一人で行っておいで。」 話としてはそういう流れになるんだろうなとは予想していた。しかし、今日はミウの出勤日ではない。そんな日に行く理由が見当たらない。 「結局アキラが指名した女の子って誰だっけ?よく覚えてないんだけど。」 「知る必要ないさ。もう行かないんだから。」 結果的に最初につれて行ってもらった翌々日には再訪問しているのだが、そのことは触れずにいたい。ボクという人物像のイメージは「ああいう店は苦手」なのだから。 「ヒデは行けばいいじゃん。オレはココでゆっくりして帰るから。」 そんな話をしているうちに料理が運ばれていた。この店の刺身は漁港から直接送られてくるというマスター自慢の魚ばかりだ。ヒデは日本酒はもちろんのこと、魚も喜んでくれた。これなら女の子を連れて来ても大丈夫だと。 しかし、簡単には彼女を店から連れ出すことはできないのだろうな。なんだかそんな予感がしていた。
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