▽エピソードその三▽

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しかし、それよりも大事なことはミウへのお土産である。先日のフェイスパックはかなり喜んでくれたので、それと同じようなものを探してみたら、あったあった。もしかしたらどこにでもあるのかも。あまり米どころとは言えない青森ではあるが、酒を飲む量となると尋常ではない。その分酒蔵も多く存在しており、そういったところが女性向けの商品をいくつも開発しているようだった。 ボクがフェイスパックの良し悪しを見分けられるはずもなく、訳のわからないまま適当に選んでしまったことはミウには内緒にしておこう。 それともう一つ、面白そうなものがあったので、これもお土産として持って帰ろう。結局ボクは本州最北端の県まで来て、ミウへのお土産を買うついでに従兄弟の結婚式に参加したようなものだったのかもしれない。 東京のアパートに帰りついたのは、日曜日のかなり遅い時間だった。荷物の整理や洗濯に掃除などの後片付けを怠ると、後で大変な目にあうので、疲れた体を無理にでも動かして必要な作業を終えてしまう。 さすがにそんな疲れた体で店に行く気力もなく、訪問は予定通り翌日とした。 ちなみにと思って近況情報を入手しようとホームページを開いてみると、彼女のブログが更新されていた。そしてそこにはなんと、ボクがプレゼントしたフェイスパックの写真が掲載されているではないか。小躍りしたくなるような気持ちを抑えつつ、青森で買ってきたお土産を大事に、小奇麗な袋に入れ直した。 そして仕事用の鞄に詰め込んで、やっと、ひと安心するのである。 三連休とはいえ、ずっと出かけていたので、ちっとも休んだ気にはなれなかったが、かといって会社が追加の休みを許してくれるわけでもなく、当たり前の月曜日を当たり前のように出勤することになる。 師走を前に詰め込み仕事が山ほど溜まっている。さすがに年末近くになると、猫の手も借りたいほどの超多忙な日々となるのだが、その前に完了させておかねばならぬ案件がいくつかあった。今週のうちに京都に行かねばならなかったし、来週には山梨への出張も待ち構えていた。 昨日までの疲れが癒えていないボクにとって、今宵のイベントは必須ならざるを得ない時間だと思っていた。今日だけはと自分に言い聞かせて、少な目の残業を終了させて会社を出る。課長が心配そうな目でボクを見送っていたが、「明日からがんばります。」と言ってなんとか事務所を後にした。
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