▽エピソード・ゼロ▽

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週末には新しいパズル本の探索に本屋に行って、あとはカフェでのんびり過ごそうかと思っていたところである。従って、金曜日の今日は大人しくアパートへ帰るつもりだった。 しかし、友情も大切な絆の一つである。折角のお誘いを無碍にしてはならない。 ―『ロッキー』だけは付き合うよ。― そうメールを返して退社の準備を進める。十月とはいえ、日中はまだまだ滴り落ちる汗が不快なよどみを演出しており、そろそろビールが欲しくなるタイミングでもあった。 『ロッキー』とは新宿駅西口付近に店を構える、ヒデの大学時代の先輩であるケンさんがオーナーとして仕切っているバーだ。ちなみにボクとヒデは同じ大学ではなかったが、ともに静岡から東京に出てきて今に至っている。 『ロッキー』に先に着いたのはボクだった。 「こんばんわ。ヒデはまだですか?」 「おう、アキラか。もうすぐじゃねえか。電話あったぜ、二人で来るってな。そこのカウンターで待ってな。で、何飲むんだい?」 「とりあえずはビールを。」 などと言ってる間にドアが開く。 「よっ、待たせたな。」 「いや、今来たとこだよ。」 「先輩、オレもビールを下さい。」     
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