▽エピソードその三▽

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鞄の中にはミウへのお土産が入っている。それを大事そうに抱え、ニタリ顔で歩く姿は、少々気味が悪かったかもしれない。でも、この時期のこの時間、すでに日は暮れており、ボクの微妙な表情まで読み取れるほど明るい景色ではなかった。 見覚えのあるアーケードを抜けると、見覚えのある交差点に差し掛かり、見覚えのある看板を見つけることができる。 そしてボクは見覚えのある階段を昇って、見覚えのあるドアを開くのである。 さて、ここからがボクの大事なイベントの始まりだ。 「いらっしゃいませ。今日のご指名はどうされますか?」 見覚えのあるボーイが尋ねると、ボクは前回と同じ口調で、 「ミウさんをお願いします。」 とオーダーする。 彼はボクのオーダーを店内へと通す。 しばらく待った後、ボクは三度目の逢瀬となる時間へ突入することになるのである。 「こんばんわ。また来てくれたのね。」 「キミが恋しくて。ところでボクの名前を覚えてる?」 「アッくんでしょ。もちろん覚えてるわよ。」 そして彼女はすぐに唇を提供してくれる。また前回と同じように、甘いネットリとした芳香がボクを強襲する。 彼女の体を抱き寄せると、ボクはそのまま彼女の体に覆いかぶさるような体勢でイニシアチブを執ろうとする。彼女も受身の体勢で待ち構えてくれるので、必然的にボクの動きはコントロールしやすくなる。 しかし、この体勢はベッドの上でとるべきであり、狭いシートにおいては体力を損なうだけの体勢にしかならなかった。 ある程度彼女との抱擁を堪能した後は、楽しいお喋りの時間が欲しくなる。ボクはそっと彼女の体を離して一息ついた。それでも彼女の手は離さぬままにいる。手のひらが汗でじっとりしてくるのがわかる。 「ブログを更新したのを見たよ。ボクのお土産を載せてくれたんだね。とってもうれしかった。だから、今日も持ってきたよ。」 彼女は不思議そうな表情でボクの顔を覗きこむ。 ボクは鞄から袋を取り出して彼女に差し出した。 「はい。同じものじゃないけど、同じシリーズで。」 「あ、ホントだ。とってもうれしい。もらったパックは使っちゃったから、ちょっと淋しかったの。あれ、すごく良かったわよ。」
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