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「おっぱいにキスしてもいい?」
すかさずボクは次のお願いに移る。
「いいよ。」
彼女から返って来る答えは決まっている。
ボクは遠慮がちに右の丘陵の頂点にある石碑に唇をあてた。その瞬間、彼女の口から小さく漏れる声が聞こえた。ボクは彼女の気持ちに応えるように、できるだけジェントルに石碑を弄んだ。転がしたり、歯をあてたりして。
そして長くは続けない。反対側の丘陵へも、同じような挨拶をしておきたいからである。
彼女のバストは豊満ではないかもしれないが、形やバランスはとても美しい。見とれるほどに。その美しい女神の象徴が、我が物になる時間を楽しみたいのである。
同時にボクは彼女の唇をも求める。ネットリとしたぬくもりも味わいたいからである。
この瞬間ボクは夢の中の世界へ陥ってしまう。現実の世界にある、嫌なこともすっかり忘れられるほどに。
すると、ボクたちの時間を切り裂くようなアナウンスが聞こえてきた。
=ミウさん、八番テーブルへリクエスト=
心配していたことが起こった。彼女を指名した客が来た合図である。
そもそも、今日は金曜日。いくら早い時間帯とはいえ、彼女をずっと独占できるはずもない。そんなことはわかっていた。
「ゴメンネ、呼ばれちゃった。すぐ戻ってくるから。」
彼女はそういい残してボクの席を立っていく。
同時にヘルプの女の子がやってきた。女の子と言うよりは、ややボクよりはおねいさんっぽい人であった。
「こんばんわ、ミカです。おや?なんだかぼおっとしてますね。これは相当彼女にはまってるようですね。」
「ごめんなさい。ぼおっとしてて。でも彼女に惚れちゃったのは事実かもしれません。ボクのタイプなんですよ。」
「うふふ。そうみたいね。あなたの顔にそう書いてあるわ。あの子はとってもイイ子よ。優しくしてあげてね。」
「はい。しばらくは通うことになると思っています。色々と彼女のことよろしくお願いします。」
「それってあなたが言うセリフ?」
「そうですね。ボクはただの客ですからね。」
「いつか良い関係になれたらいいわね。」
「そんなことにはなりませんよ。ボクはただのお客さんです。ボクが彼女と良い関係になんかなりませんよ。」
「そんなことわからないじゃない?」
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