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「ミウちゃんもこういう情報を載せてくれたらうれしいのになあ。」
しかし、彼女にとってこの店は卒業までのアルバイト。
「そういえば、彼女はいつまであの店にいるつもりなんだろう。今度行ったらちゃんと聞いてみよう。」
そんなことを思いながら、今宵も更けて行く。ボクは眠くなった目をこすりながらベッドへと潜り込んだ。
外では冷たい風が静かに街並みを包み込んでいた。
待ちに待った金曜日、まずは会社の忘年会が始まる。
「今年も一年間ご苦労だった。とはいえ、まだまだ年末まで忙しいと思うが、もうひと踏ん張り頑張って欲しい。」
と部長の挨拶で宴会が始まる。
この日の料理はちゃんこ鍋だ。焼肉だったらどうしようと思っていた。去年がそうだったから。焼肉はどうしてもニンニク臭が残るから、この後のことを考えると遠慮がちになるのだろうが、結果的にそれは回避されることになった。
もちろん酒も控えめだ。ここでベロベロになったのでは色々と始末が悪い。そんなスローペースのボクを係長あたりが心配する。
「どうした不動、今日はいやに大人しいじゃないか。若いのがそんなに静かでどうするんだ。もっと飲め、そして騒げ。」
「係長、ボクは明日の出勤当番に当たってるんです。今日は食事だけして帰るつもりなんですが。」
「バカモン、若いやつが明日のことなぞ考えてどうするんだ。」
「でもね係長、明日はきっとイロハホテルから電話があると思いますよ。昼間、そんな話をされてましたよね、隣で聞いてましたけど。明日ヘロヘロのままで対応していいんですか?係長の大得意先でしたよね。」
「うーん、それを言われると弱いな。いい所を突いてくるじゃねえか。さすが期待のホープだな。じゃ、今日は勘弁してやるよ。明日の対応よろしくな。」
係長はボクの肩をポンと叩いて、諦めた様に課長の酌をしにいった。
忘年会は基本的に二時間。八時の開始だから終了は十時だ。
二次会免除の切符を持っているボクは、先輩方に挨拶だけして、みんなを見送る。
さて、その後は急ぎ足で『ピンクシャドウ』へと向かうのである。
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