▽エピソードその五▽

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▽エピソードその五▽

店に着いたボクは、今までと同じようなルーチンをこなして店内に入る。もちろん女の子の指名はミウであることは言うまでもない。 こんな遅い時間に訪問するのは初めてだ。しかしさすがは金曜日、店内には多くの客の喧騒が渦巻いていた。 ボクはドアの手前から二番目の通路の奥にあるシートに案内された。そしてミウが現れる。 「アッくんこんばんわ、今日は遅いのね。飲み会だったの?」 「うん、さっきまで会社の忘年会だったんだ。終わって直ぐに来たんだよ。」 「みんなと一緒に?」 「いいや一人さ。みんなには教えたくないからね。こんな可愛い子がいるところ。」 「うふふ。」 ボクたちは一週間ぶりの抱擁と口づけを楽しむ。 (確認しておくが、楽しんでいるのはボクだけで、彼女は仕事として仕方なしにこなしているということは、一応認識している。ただ、ボクとしてはこの店の中だけでは恋人でいたいので、そういう表現をしているということ。) スタートのキスはゆっくりと時間をかけて、互いのぬくもりと芳香をじっくりと確かめ合う。その時が永遠であれば良いのにと思うほどに。 やがてボクは彼女の体を離して、鞄の中から小袋を取り出した。 「今日もお土産があるんだよ。ブログネタ用のね。」 「ホントに、なになに?どんなの?」 はしゃぐ姿はホントにその辺の近所に居る女の子みたいだ。昔から知っている同級生の妹、まさにそんな感じである。 「うわあ、何これ?面白い、こんなのがあるんだね。」 ミウはボクが用意した小物を次々と手のひらに載せては観察する。チーズのキーホルダーはプニプニとした感触が気に入ったらしく、指で何度も押さえてはコロコロと笑っていた。 「これでブログも書けるよね。ミウちゃんの更新頻度が少なすぎて淋しいよ。」 「ゴメンネ。でもまだ卒論が書き終わってないからそれどころじゃないの。パソコン打つの下手だし。アッくんはキーボードってパチパチ打てるの?」 「そうだね、一応ブラインドタッチで打てるよ。」 「すごーい。私もそれぐらい早く打てれば、もっと早く論文書けるのに。」 「なんならボクがキミの代わりに打ち込んであげようか?」 「うふふ、そうね、ホントにお願いしようかな。」 「連絡してくれれば何時でも手伝いに行くよ。」 「うん、わかった。お願いね。」 まあ、そんなことは実現しないのだが、わかっていても少し期待してしまう。
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