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そして、ふと彼女の手先を見ると、それこそ白魚のようにか弱くてか細い指をしていた。爪の先も綺麗に短く切りそろえられており、最近流行のネイルアートも付いていなかった。
「爪は伸ばさないんだね。」
「うん、リクルートの時期だし。ホントは綺麗にしたいんだけど。」
「ボクは短くて清楚なのが好きだよ。できればこのままの方がうれしいな。」
「わかった。アッくんがこの方がいいって言うならそうする。」
ボクは黙ったまま彼女を抱き寄せ、その美しい指に口づけを捧げた。
「ところで、まだボクのことは信用できない?」
「えっ?何のこと?そんなことないよ。」
「何時になったらメールをくれるのかなと思って。ボクの名刺は渡してあったよね?」
「あっ、そうだった。別に信用してないから連絡しないとかじゃないの。ホントに今はバタバタしててできなかっただけなの。」
「大丈夫。怒ったりなんかしてないから。それにボクが勝手にメールしたって、逐一返事をすることもないんだよ。」
「うん。ゴメンネ。今度するから。」
「覚えてたらでいいよ。それと、もう連絡がとりたくないって思ったら、着信拒否の扱いにしてくれていいからね。」
「大丈夫、そんなことしないから。」
彼女はそっとボクを抱きしめてくれる。
「でもね。ボクもただのエッチな男の人だから、あんまり安心しすぎてもダメだよ。」
「うふふ。アッくんはアッくん。可愛くてジェントルでちょっと甘えんぼさん。私にはそう映ってるわ。」
「そうか。じゃあ少しばかり甘えさせてもらおうかな。」
ボクは彼女の胸に顔を埋め、その肌に唇を這わせる。同時に右手は背中へと移動し、左手は腰の辺りへと遠征している。
このとき彼女はどんな表情をしていたのだろう。ボクはただうっとりとするしかなかったのだが。
そんなタイミングで気の利かないアナウンスが流れる。
=ミウさん、六番テーブルへバック=
「ゴメンネ。今日はもう一人だけお客さんがいるの。直ぐに戻ってくるからね。」
やはり金曜日に独占という訳にはいかない。
この店には客が好き勝手なことを書いては楽しんでいるネット上の掲示板があるのだが、ある輩がミウのことをこう表現していた。
『こんな店にはいなさそうな初心な感じ』
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