▽エピソードその七▽

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「そんなこと、お前んとこのカレンちゃんが許してくれないだろう。」 「大丈夫さ、ダブルで指名すれば。少し経費はかさむが、両手に花の状態でおまいさんのオキニをじっくりこの手で味わうってのも悪くないな。」 「あんまり褒められたやり方じゃないな。」 「おまいさんが今まで黙ってるからじゃん。指名されたくなかったらどんな女の子か詳しく教えろ。さもないと、ホントに指名するぞ。」 とんでもない脅し方だ。しかしヒデの腕に抱かれた後のミウを想像するには、相当忍び難かった。 「頼むからそれだけは止めてくれ。彼女のことは話すから。」 「やけに素直だな。そんなにイイ子だったのか。」 「ああ、その辺の近所のどこにでもいる女の子なんだ。爪も短くて、髪も黒くて、真面目で素直で・・・。」 「ああ、もうわかったわかった。これ以上のろけられてもたまらん。それで?連絡先ぐらいは交換できてるんだろ?」 「なんとかね。一応出勤の変更があったら連絡してくれるよ。」 「ほう、それぐらい小まめに通ってるってことだな。でも、ほどほどにしておけよ。」 今度は急に諌めてくる。 「別に。大丈夫だよ。」 「いや、これは緊急事態だな。おまいさんが大丈夫なんて言ってる案件はほとんどがはまってる場合だからな。お店の女の子と仲良くなるのはいいが、付き合ったりできるわけじゃないぞ。そこんところは理解しておけよ。親友だから忠告してるんだ。」 「一度ちゃんとデートしたぞ。クリスマスプレゼントだってお店の支給品以外の物をもらったぞ。」 あまりにも言われっぱなしで、多少悔しかったりもしたので、言わなくてもよかったことを言ってしまった。 「それはな、出勤前の食事だろ?奢らされただけじゃん。それに顔見知りの通い客なら支給品以外の物をもらっても普通だよ。オレだってカレンちゃんからは支給品以外の物をもらったぜ。だけどそれほど特別じゃあない。通ってる客へのほんのお礼程度さ。」 ボクは何も言えなかった。そうじゃないと否定できる根拠が何も無いからである。 確かに食事をしたのは出勤前だったし、もらったプレゼントもそんなに高価なものではない。しかし、少なくとも彼女が支給品以外にしつらえた品物はボクへのプレゼントだけだったと思う。しかしこれもボクの思い込みと言ってしまえばそれまでだ。彼女の鞄の中をくまなく調べたわけじゃない。
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