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「いいんだ。オレがそれで満足していれば。彼女とご飯が食べられただけでも満足だよ。」
「確かにそれはそうだよな。オレなんかカレンちゃん目当てにもう一年半も通ってるのに、いまだに同伴だって許してもらえてないしな。おれもそろそろオキニの乗り換え時期かな。そのミウちゃんていう子に。」
「おいおい、全部喋ったんだから、今更それはないだろう。」
「はははは、ウソだよ。それにしてもおまいさんはわかりやすいなあ。そんなのでよく食事に引っ張り出せたなあ。いや、もしかしてこういう単純なやつの方が行きやすいのかな。オレも今度はその手でいくかな。」
「今更やってきたことを無かったことにはできないんじゃない?」
「確かに。そのミウちゃんって子はカレンちゃんと仲良くないのかな。今度ダブルデートの提案してくれよ。全部オレの奢りでいいから。」
「無理だよ。オレだって二度目があるかどうかわからないんだから。」
「ん?さてはなんかあるな?」
「彼女は学生なのさ。今年で卒業だから、もうオレと遊んでる暇なんか無いのさ。オレも彼女の卒業の邪魔になるようなことはしたくないし。」
「ああ、その素直なところなんだな、きっと。女の子がそれを本気で捕らえるかどうかは個人差があるかもだが。」
「もうそろそろこの話はいいだろ。早く出発しないと、年内に着かなくなるぞ。」
かれこれ三十分は話し込んでしまっただろうか。夜が明ける前に静岡県内に入っておかないと、今度は後続の渋滞に追いつかれてしまう。それだけは避けなければならない。
ああ、内緒にしてたのに、ほとんど喋ってしまった。それはそれでかなり深い後悔をしている。ケンさんには喋らないように口止めしておかないと。
そんな約束を守れるヒデじゃなさそうだけど。
やがて夜が明けて、多くの人が次の行動に動き出す頃、ボクたちは無事に静岡に着いた。ヒデを実家まで送って、その足でボクは自分の実家へ向けてアクセルを踏んだ。
ときはすでに大晦日、多くの家で正月の準備に余念がなかった。すでにしめ縄や門松が玄関先に飾られている家が何軒もあった。
ウチではお袋がボクの帰りを待ちかねており、ボクが帰ると同時に「ご飯は食べたか」と聞いてくる。昔から世話好きのお袋のことだ。しかし今となってはそれが少々鬱陶しい。
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