▽エピソードその七▽

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何だかやり切れない気持ちを抱えながら空を見上げると、見覚えのある真っ赤な月がボクを責めるように見下ろしていた。憤りが迷走する夜だった。 正月に遊びまくったお陰で体力は消耗したが、メンタル部分は一新できた。 休みの間、ボクはミウのことを一日だって忘れることはなかった。東京に戻れば、新しい年の新しい生活がボクを待っているはずだ。 ボクの仕事もヒデの仕事も年明けのスタートは六日からだった。遅くとも前日には東京に戻らなければならない。ボクたちはその前の日、つまりは四日の夜に静岡を発つことにしていた。しかも帰りはテルも一緒に帰ると言い出している。 「もうちょっとアキラの話を聞いておきたいからな。」 というのがテルの言い分であったが、ボクは彼女に関することは金輪際、彼らには話さないつもりでいた。 しかし、ヒデという解説者がいるのだから堪らない。 「ヒデちゃん、とりあえずその店をオレにも教えてくれよ。絶対ヒデの女の子もアキラの女の子も指名しないからさあ。オレだってお前たちとなんとか兄弟になるのは嫌だからな。その辺は弁えてるつもりだぜ。いい子がいるんだろその店。」 「お前だっていつも行ってる店があるんだろ、そこでいいじゃねえか。」     
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