▽エピソードその七▽

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夕飯も駅を降りたところで牛丼をさっくりと胃の中に納めて後、コンビニで缶チューハイとサラミを買って帰るだけとなった。 テレビをつけてニュースを見ようとしたとき、テルからの電話が入る。 「おう、アキラ先生元気かい?今日、ヒデに連れてってもらったぜ例のところ。オレにはアキホちゃんっていう女の子がついてさ、彼女もすごく良かったよ。ヘルプについてもチューするんじゃねえぞ。よろしくな。」 「初めて聞いたよ、その子の名前。でもわかったから。ヒデにもよろしく。」 「いやいや土曜日だぜ、今どこにいるんだい、まだ十時ちょっとじゃねえか、遊びに行こうぜ。いい若いモンがこんな時間に帰宅する手はないだろう。」 「オレは今まで仕事してたんだ。疲れてるから今日は寝かせてくれ。もう自分ちに帰ってきてるし。今から出て行く気力も体力もないよ。」 「じゃあ、オレたちがおまいさんちへ行ってやるよ。」 「来るな。もう鍵を閉めて寝るんだから。また今度付き合ってやるから、今日と明日はゆっくりさせてくれ。ヒデにもそう言っておいてくれよ。」 それだけ言ってボクは一方的に電話を切った。 数十秒後にケータイがなったが、おそらくはそうなるだろうと思っていたので、マナーモードにしてほったらかしていた。 それからボクは缶チューハイを空にした後、シャワーを浴びてベッドへと潜り込んだのだが、十分もしないうちに叩き起こされる羽目に陥る。 『ピンポーン』 玄関の呼び鈴が鳴る。まさかとは思っていたが、おそるおそる覗き窓を見てみると、案の定悪友二人がニヤニヤしながら呼び鈴に指をかけていた。 いつまで経ってもドアを開けないボクに対し、何度も呼び鈴攻撃を仕掛けてくるので、近所迷惑を考えたボクは、諦めたように扉を開いた。 「おいおい、居るんなら早く出ろよ。」 「もう寝るから来るなって言っただろ。」 「まあそういうな。折角来たんだから、ちょっと入れてくれよ。」 彼らはボクの許可を得る以前からすでに足を踏み込んできている。多勢に無勢では、後退りするしかないボクを部屋の奥へ追い込むように押し入ってくるのだ。 「ほら、ちゃんと土産を買ってきてやったんだから、素直にオレたちの話を聞け。」 寝入り端を襲われた状態のボクは、コタツのスイッチを入れ、寝間着の上から半纏を羽織って渋々座り込むしかなかった。 「まあ、まずは乾杯だ。」
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