▽エピソードその八▽

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短い言葉で紡ぐ会話がなんとも初々しい。自分で言うのもなんだけど。 「さあ、今日は何を食べる?」 「そうねえ。」 二人で一枚のメニューを見ているとき、ときおり触れ合う指から伝わるぬくもりを感じた時に視線が合う。 「うふふ。」 その度にニッコリと笑う彼女の笑顔に癒されるボクがいる。 「今日はスープパスタにしようかな。」 ミウはトマトベースのスープパスタをチョイスした。 「ボクはいつものようにボンゴレにするよ。ワインはどうされますかお嬢さん。」 「あんまり強くないからまだオレンジジュースでいい。」 「ボクは白をもらおうかな。」 こういう会話をしているときは、時間の流れがスローに感じる。ずうっとこうしていたい気持ちになる。 オーダーを済ませて、料理が出てくるまでの間、ボクは彼女を瞳の中に焼き付ける。 会ったのは久しぶりだが、変わった様子はなかった。それでも、 「髪切った?」 半分当てずっぽうだったのだが、年末にかけて髪を切らない女の子はいないだろうと思い、聞いてみたのだが。 「すごいね。ほんのちょっと切っただけなのにわかるの?」 肩まで伸びている髪を手でスラッとなびかせて見せる。     
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