▽エピソードその八▽

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「もちろんさ。なあんてね、実はあんまりよくわからなかったんだけど、半分は当てずっぽうさ。」 「なんだあ、やっぱりね。ちょっとドキッとした。」 「ごめんね。お詫びに、でもないけど。」 そう言ってボクは鞄から小さな包みを取り出した。 「静岡のお土産。」 「開けてもいい?」 ボクがうなずくと同時に袋を開いていく。 入っていたのは石鹸だった。 「静岡って言えばお茶でしょ。お茶の成分が入った石鹸だよ。何に良いかはわかんないけど、なんだか良さそうだったから。お肌に良いって書いてあったし。」 「ありがとう。大切に使う。でも使うのもったいない。」 「折角買ってきたんだから使って。良かったらまた買ってくるから。」 どうやら気に入ってもらえたようだ。 やがて料理が運ばれてきて、ボクたちのテーブルを彩る。 ディナーにはまだ少し時間が早いので、店内の客もまばらだ。そんなゆったりとした空間でゆったりとした時間を過ごす。 けれどもそんな楽しい時間はあっという間に過ぎるのである。 「今日も美味しかったわ。」 「ボクはいつもどおり美味しかったよ。」 「そろそろ行かないと叱られちゃう。」 「今日も一緒に行かなくていいの?」 「ダメよ、一緒に来ちゃ。後でゆっくりとね。」
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