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確かにそう言われた記憶があった。ミカさんに言われて自分自身を奮起したことも間違いではなかろう。結果的にそうなったのだから、結局のところキューピッドはミカさんだったのかもしれない。
「でもねえ。大丈夫かしらあの子。」
「何がですか?」
「大学生でしょ。就職はどこになるのかしらねえ。」
結構お店の女の子同士の中で情報交換が進んでるんだと思った。そんなことまで知っているとは思わなかった。
「遠距離恋愛でも大丈夫ですよ、ボクは。」
「まあ結果的に振られたら、また来なさい。慰めてあげるから。」
丁度そのときがヘルプ終了のタイミングだった。
ミカさんが去り、ミウが戻ってくる。
「ただいまあ。」
何事もなかったかのように戻ってくるのだが、上目遣いで見つめていると、
「どうしたの?ミカさんがなんか言ってた?」
「なんでボクだけミウちゃんにキスしてもらえるんだって。でも内緒にしてあげるって。」
「うふふ。もうキスしたなんて言ったらダメよ。あとで内緒にしてねってミカさんにもお願いしておくから。」
「うん、わかった。キミがずっとここにいてくれれば、ボクも他の女の子と話をせずに済むんだけどな。」
「もう無いと思う。さっきのお客さんにも冷たくあしらったから、たぶん指名されないと思うし。」
そんな会話をしているうちに、八番テーブルのお客さんには、別の女の子が指名されたというアナウンスが流れていた。
お陰でボクは安心して彼女とまったりとした時間を過ごせるという訳だ。
「でもねアッくん。あんまり長くいちゃダメよ。怪しまれるし、お金もったいないでしょ。無理しちゃダメよ。」
しかしボクには心配事があった。
彼女がなぜアルバイト先にこの仕事を選んだかを聞いていない。
ある女の子は趣味を充実させるため。別の女の子は奨学金を返すため。またある女の子は、昼の会社じゃ給料安いから。などなど。彼女たちがこの店で働く理由はお金にまつわることが多いらしい。
ではミウはどうだろう。
お金の理由がなければ、コンビニやファミレスでも良かったはずだ。もし辞めたら、金銭的な理由で困ることがあるのではないだろうか。ボクはそんな心配をしていたのである。
しかし、いざとなったら聞けなくなるものである。特に親密な関係になってからは。
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