▽エピソードその八▽

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「今日は3セット分ぐらいはいるつもりで来てるから大丈夫。あともう少し一緒にいさせて。久しぶりに会えたんだから。」 そしてミウを膝の上に乗せて彼女の匂いと肌の感覚を堪能する。 ボクも決して草食男子ではない自覚がある。彼女の体をこの手に抱いて彼女を欲しいと思わないはずもない。ボクの分身もウズウズしだしている。 「今度の金曜日はお肉を食べに連れてって。」 「それで、そのあとボクがお店に送り出すの?それはなんか気持ち的に嫌かも。」 「大丈夫よ。もうアッくん以外にはヘルプ専門なんだから。喫茶店のウエイトレスと同じよ。ちょっと触られるかもだけど。」 「うーん、微妙だなあ。でもあと三回、割り切って送り出すよ。」 「うん。」 そしてボクたちはまたぞろまどろみの中で時間を過ごす。 もう何も焦ることも急ぐこともなくなったボクは、ときおり彼女のやわらかな丘陵へタッチすることは忘れなかったが、後の時間はずっと唇を合わせたまま抱き合っていた。 そんな夜もやがては終わりを告げる。 「さあ、もう帰る時間が来ちゃった。」 「気をつけてね。また会おうね。」 そして別れのキスのあと、ボクと彼女の体が離れる。 いつものようにドアまで見送ってくれる彼女を残し、ボクは店を出た。 その時、いつものボーイがボクを呼び止めた。 「聞きましたか?彼女もとうとう辞めることになりました。まあ、彼女は元々短期間なのは決まってましたけどね。また別の女の子もよろしくお願いします。」 ボクはそのボーイさんには特に何も返事をせず、ただニッコリと微笑んで丁寧にお辞儀をして、その場を立ち去った。 彼はそんなボクを不思議そうな顔をして見送っていたが、「ありがとうございました」と言って機嫌よく見送ってくれた。 さて、ボクは次の金曜日に向けての計画を練らなければならない。 「ちゃんとする」と自分で言ったのだから、色んなことにちゃんとしなければいけない。 また、「肉を食べたい」という彼女の願望も叶えてあげなければいけない。 この日の夜からボクは次の金曜日に向けての事のみを考える時間が増えるのである。 ちなみに彼女のブログは、あの日、店が開店する少し前の時間に更新されていたようだ。店を辞める話もそれまでに決着が付いたのだろう。元々短期間の約束だったことはボーイでも周知の事実だったようだし。
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