25人が本棚に入れています
本棚に追加
ブログの内容はこんな感じだった。
「ミウです。
もうお話した方もおられますが、今月一杯でお店を卒業することになりました。
上手く卒論が書けなくて、本業の卒業が危なくなってきたので、お店は早めに卒業します。
今までありがとうございました。
ヘルプだけですが、あと三回だけ出勤します。
今度の金曜日と日曜日、それからその次の土曜日でラストです。」
確かにミカさんから聞いていた内容だった。でも、こんな内容で納得する客がいるのだろうか。元々多くの固定客を抱えていないような雰囲気ではあったが、ボクなんかだと「さよなら」って言われてもまた行きそうだけどなあ。
女々しいのかな、ボクって。
その日の夜、日付変更線が通過する頃、ヒデから電話がかかってきた。
「おい、どうだった。」
「行ったよ。楽しい会話ができたよ。それでいいんだろ。」
「うーん。まあいいか。で、次はいつデートするんだい?」
「それを聞いてどうするのさ。まさか一緒に行くなんて言うんじゃないだろな。」
「もちろん行きたいに決まってるじゃん。」
「嫌だ。絶対に教えない。」
「ははーん。教えないってことは、デートの約束ができたってことだな。それを聞いて安心したよ。その結果と誘い出し方だけ教えてもらえればいいさ。頑張れよ。また今度『ロッキー』でゆっくり聞くから、じゃあな。」
なんだかんだで結構いいヤツだ。こういうヤツだからこそ今まで付き合っていられたということでもある。
ヒデのいうようなデートに誘えるためのノウハウなんてボクには無いし、聞かれてもわからない。彼の目的とボクの目的も恐らくは違うのだろう。
それでも諦めないヒデは、さらにその翌日も電話してきた。
「今日か明日、『ロッキー』に集合できるか。ちょっとゆっくり、サシで話をしよう。おまいさんがどうやって女の子を落としていくのか、きっちり聞かせてもらうぜ。」
「まだ新年会シーズンが終わらない限り、早くは行けないよ。せいぜい八時かな。」
「それでいいよ。『ロッキー』で待ってるから。必ず来いよ。明日な。」
ほぼ一方的に約束させられた感じだが、行くしかあるまい。どうせ、行くって言うまで電話がかかってくるんだろうからね。
ヒデとの約束の日、その日はポタポタと冬の雨が滴り落ちていた。
最初のコメントを投稿しよう!