▽エピソードその八▽

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「ヒデ、お前は何もわかってないな。たぶん、アキラがする会話はおねーちゃんたちを楽しませる会話じゃねえと思うぜ。何を盗もうと思ってるのか知らねえが、お前の前じゃ、喋らんだろうよ何も。」 「それでもいい。オレとどう違うのかが知りたいだけ。とにかく行こうぜ。なっ、一時間だけ。頼むよ。」 ボクが渋い顔をしていると、ケンさんはボクの背中を押した。 「ムダだろうが付き合ってやれ。親友だろ。」 「オレなんかよりもケンさんの会話を真似した方がいいんじゃないですか。」 「オレと一緒に行ったって今とあんまり変わんないさ。だからお前を連れて行こうっていう訳だろ。一回行けば、お前と一緒に行ってもムダだってわかるさ。」 ボクは渋々承諾するしかなかった。 仕方なしにボクとヒデは『ロッキー』を出て、ヒデの馴染みのキャバクラへ行くのである。 何かを予感させるかのように、いつのまにかすっきりと雨の上がった道を進み、『アイリス』という名前の店に入る。ヒデの主導で女の子の指名と飲み物のオーダーを済ませると、ほどなく無難なボックス席へ案内された。 指名の女の子はユミコと名乗り、彼女はヒデとボクの間に座った。更にその両端に別の女の子たちが座って準備が完了となる。
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