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「えっとね。それに・・・。」
そこまで言って口をつぐんだ。
「どうしたの?ボク、ミサのこと大事にする。卒業までちゃんと待つ。」
「ホントに私でいいの?それに、卒業が決まるまではなかなか会えないよ。それに、卒業しても東京にいるとは限らないよ。内定もらってる会社の赴任先がどこって決まってないし。離れ離れになるかもよ。」
「いいんだ。ボクはこう見えて忍耐強いから。それに少々遠くても会いに行くから。」
「うふふ。」
彼女はボクがかざしていたブーケを受け取り、
「ありがと。やっぱ優しいね、アッくん。」
「ホントに好きなんだ。でもお店の中ではミウちゃんって呼ばないとダメなんだね。」
「うん。でも今日は来ちゃダメよ。もうミウは指名できない女の子だから。そしてその名前は今日で忘れてね。」
「でも、ミウちゃんのラストナイトになる日は行くよ。しかもラストの時間に。ボクの手で送り出したいから。いいでしょ?」
「アッくん。」
ボクはとうとう手に入れた。素敵な笑顔の女の子を。飛び上がりたいほどうれしかったが、さすがに店の中では憚れるべきだった。
ウキウキした気持ちを落ち着かせるべく、次の手段に講じる。
「ねえ、面白いものを見つけたんだ。」
そう言ってボクは鞄の中から丸いカプセルを出して見せた。
「何これ?」
ミサは二つのカプセルを物珍しそうに、手にとって眺めていた。
「面白そうなガチャポンがあってさ。揚げ物のタオルだって。どっちか好きな方をあげるよ。もうひとつはボクが持つことにすれば、それはそれでお揃いになるでしょ。」
「面白そうね。じゃあ、私はコッチ。」
そう言って一つのカプセルを手に取る。
「じゃあ、ボクはコッチ。」
ボクも、もう一方のカプセルを手に取った。
二人で「せーの」って言いながらカプセルを開けると、ボクのカプセルからはトンカツのタオルが、ミサのカプセルからはアジフライのタオルが出てきた。
「私のエビフライ?エビって食べられないからいやだなあ。」
「それ、アジフライだよ。」
「でもトンカツの方がいい。」
ボクは「はいっ。」ってトンカツのタオルを渡す。ボク的にはアジフライの方が形も面白いと思ったんだけど、彼女はトンカツの方が気に入ったようだ。
「これって友達に見せたら自慢できそう。」
「喜んでくれるなら、うれしいよ。」
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