▽エピソードその九▽

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「アッくんって、女の子を楽しませるの上手ね。お店でもずっと褒め上手だったし。今まで何人の女の子を操ってきたの?」 「ボクはいつだって振られてきたんだよ。つまんないって言われて。」 「ホントに?信じられない。アッくんみたいに楽しい男の人初めてよ。」 「ずっとキミを楽しませられるようガンバルよ。」 そのときボクは彼女の手を握った。 彼女もボクの手を握り返してくれた。 彼女の手のぬくもりが心に染みた。 ここで今日の第一ステージの終了である。 「さあ、お肉を食べに行こう。」 「そうね、うんとニンニクの利いたのがいいかも。」 「でもさ、それってお店の人に叱られない?」 「うーん。でももう誰ともキスなんかしないから。ミウのこと嫌いになってくれてもいいぐらいだもん。」 「だけどやっぱり、プンプンするのは良くないよ。今日は肉バルでがまんしてね。お店を卒業したら焼肉に連れて行ってあげる。そのときはニンニクの匂いをプンプンさせて帰してあげる。」 「うん。」 肉バルの店は最近の流行なのか、あちらこちらにカフェスタイルの店がそぞろ並んでいる。客層も若者からオジサンまで幅広く指示されているようだ。 ボクたちが入った肉バルの店は、駅と『ピンクシャドウ』とのちょうど中間地点辺りにある店で、割と人気店だった。しかし、時間も早いのか客入りはまばらで、簡単に二人がけのテーブルを確保できた。 「お嬢さんは何を飲まれますか?」 「まだ出勤前だからウーロン茶でいいわ。」 「ボクは少し飲もうかな。肉のオーダーはお任せでよろしいですか?」 「はい。お願いします。でもミサはレアが好き。」 「承知いたしました。」 ボクの発注したオーダーは、アンガスのテンダーロインとラムシンのロースト、それに合鴨のタタキとサラダ。足りなくなったら追加すればいい。 前菜として運ばれてきたポテトサラダをつつきながら肉を待つ。 「アッくんお肉も詳しいの?」 「独り者だから、たまに外食するからね。ちょっとだけミサちゃんより詳しいかも。でもそんな程度だよ。ところで、ミサちゃんは何を専攻してるんだっけ?まだ聞いてなかったよね。」 「社会福祉学よ。そしてね、ソーシャルワーカーになるの。」 「何それ?」 「んー、病院とかでね、患者さんの相談に乗ったりする仕事。」
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