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「アッくんって、女の子を楽しませるの上手ね。お店でもずっと褒め上手だったし。今まで何人の女の子を操ってきたの?」
「ボクはいつだって振られてきたんだよ。つまんないって言われて。」
「ホントに?信じられない。アッくんみたいに楽しい男の人初めてよ。」
「ずっとキミを楽しませられるようガンバルよ。」
そのときボクは彼女の手を握った。
彼女もボクの手を握り返してくれた。
彼女の手のぬくもりが心に染みた。
ここで今日の第一ステージの終了である。
「さあ、お肉を食べに行こう。」
「そうね、うんとニンニクの利いたのがいいかも。」
「でもさ、それってお店の人に叱られない?」
「うーん。でももう誰ともキスなんかしないから。ミウのこと嫌いになってくれてもいいぐらいだもん。」
「だけどやっぱり、プンプンするのは良くないよ。今日は肉バルでがまんしてね。お店を卒業したら焼肉に連れて行ってあげる。そのときはニンニクの匂いをプンプンさせて帰してあげる。」
「うん。」
肉バルの店は最近の流行なのか、あちらこちらにカフェスタイルの店がそぞろ並んでいる。客層も若者からオジサンまで幅広く指示されているようだ。
ボクたちが入った肉バルの店は、駅と『ピンクシャドウ』とのちょうど中間地点辺りにある店で、割と人気店だった。しかし、時間も早いのか客入りはまばらで、簡単に二人がけのテーブルを確保できた。
「お嬢さんは何を飲まれますか?」
「まだ出勤前だからウーロン茶でいいわ。」
「ボクは少し飲もうかな。肉のオーダーはお任せでよろしいですか?」
「はい。お願いします。でもミサはレアが好き。」
「承知いたしました。」
ボクの発注したオーダーは、アンガスのテンダーロインとラムシンのロースト、それに合鴨のタタキとサラダ。足りなくなったら追加すればいい。
前菜として運ばれてきたポテトサラダをつつきながら肉を待つ。
「アッくんお肉も詳しいの?」
「独り者だから、たまに外食するからね。ちょっとだけミサちゃんより詳しいかも。でもそんな程度だよ。ところで、ミサちゃんは何を専攻してるんだっけ?まだ聞いてなかったよね。」
「社会福祉学よ。そしてね、ソーシャルワーカーになるの。」
「何それ?」
「んー、病院とかでね、患者さんの相談に乗ったりする仕事。」
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