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「大きなお世話ですよ。そっとしておいてください。まだ振られてませんから。」
「で、好きだって言ったのか?」
「言いました。」
「で、私もって言ってくれたのか?」
「言ってくれました。」
「じゃあなんで浮かない顔なんだ?」
「浮かない顔に見えますか?うれしくて仕方ない顔に見えませんか?」
「ははは、口がへの字に曲がってるからなあ。で、何が納得いかないんだい?」
「今日なんですよ。好きだって言ったの。でもね、一緒に食事をして、そのあとで彼女はお店に出勤なんですよ。それを送り出さなきゃならない自分が何だか納得いかなくて。」
「まだ店に出るのか?結構エッチな店って聞いたけど。そりゃあいかんだろう。」
「彼女はもうヘルプだけだから、絶対に体も触らせないって言うんですけど。それは信用するんですけど。ボクがそれを見送るように送り出したもんですから、何だかそれが不甲斐ないような気がして。」
「なんだ、彼女が絶対に大丈夫っていうなら、信じるしかないじゃんか。そんなに信用が置けない子なのか?」
「いえ、大学も将来も目的も目標も持ってる子です。オレなんかが足元にも及ばないぐらいしっかりした子ですよ。」
「だったら大丈夫だよ。心配し過ぎるとかえって良くない想像してしまうぞ。」
「その通りだ。」
いつの間にかケンさんがソーセージを持ってボクの後ろにいた。
「ヒデも言ってたぜ。いい子なんだってなあ。店でその子のことを悪く言う子が一人もいないって。アイツのオキニの女の子も、あの子なら大丈夫って言ってたらしいじゃん。」
「そうなんですけどね。でも、実際に彼女を送り出してみると、何だか自分が情けないような気がして。」
「逆だよ。彼女のことを信用して送り出せるから、自信を持てるんじゃねえか。彼女だって大丈夫、頑張れよって送り出して欲しいに決まってるじゃねえか。そうじゃねえと、逆に変な風に気が揺らぐかもよ。」
「脅かしっこなしですよ。そうですね。ボク自身の問題ですからね。それに、今夜とあと一回で終わりですから、その店も。」
「じゃあ尚更大丈夫だよ。彼女だって卒業前にアクシデント抱えたくないよね。」
「でもお店でそんなことコントロールできるんですか?」
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