▽エピソードその十▽

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▽エピソードその十▽

告白して、それを受け入れてもらえたとはいえ、彼女が卒業するまでは色んなことを待たねばならぬ。デートもしばらくの間はなかなかできないだろう。 高校や大学時代に女の子と付き合っていた当時は、彼女とほぼ毎日顔を合わせていた状態なので、何日も会えない関係って初めてだから、どういう風にして日常を過ごせばいいのかわからない。ワクワクする時間なのか、ウキウキする時間なのか、はたまたモンモンする時間なのか。 とりあえず、しっかりした彼女の言葉を信じることにして、次のデートの事を考えることにしたのである。 前回の食事会では、肉が食べたい彼女をバルに連れて行ったが、次回もまだ焼肉はお預けになるだろうな。だとすればどうする? きっと今はこういったことを考える時間なんだろうな。 そしてボクはパソコンに齧りつく。そして店の検索を始める。今の世の中は便利になったもので、インターネットをつなげばすぐにお目当ての店が検索できる。新宿駅近くの肉バルっていうだけで何十件もの店がヒットし、メニューから値段までわかる仕組みになっているのである。 こういうことが割と面倒くさいと思わないボクにとっては、至極の時間である。彼女との食事デートのプランを想定しながら店とメニューを検索していく。 何十件もの店がヒットするが、お目当ての店は一時間程度で見つかった。前回の店よりもメニューが豊富で店内の装飾も綺麗だ。 「よし、ここに決めよう。」 次の日曜日、午後三時。二人。料理は行ってから決めよう。 次にラストナイトのために、まずは『ピンクシャドウ』卒業のお祝いを検討する。 「卒業」・・・・・・。 ミウもブログで書いていたけど、こういう店を辞めるときに「卒業」という言葉を使うんだね。彼女は確かにこの店を辞めた後は、普通に就職するから卒業でいいんだけど、他の店に変わる場合は「転校」と言ったりするのだろうか、なんて考えてみたりする。 どうせなら、他の店から来た女の子なんかを「転入生」、店長を「担任」なんて言えば面白いかも。 それはともかくとして、彼女の卒業祝いはどうしよう。 ボクには一つ考えがあった。 なかなか趣味にはできていないが、少しばかり絵ごころがある。美術部に入るほどではなかったが、小さいころからよく動物の絵を描いていたし、小学校の校長室に飾られたこともあった。
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