八章・疑念

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ーーディサピアランス宙域、AAA改、艦橋ーー 「ホワイトシャークズの回収に成功! これより戦線より離脱します!」  レヴニカの報告にウローラは「うむ」と返す。AAA改は可変右翼を失いながらも宇宙軍防衛部隊をくぐり抜けてホワイトシャークズの回収に成功していた。  そのまま味方艦隊と合流するために全速で向かっていた。凄まじいGが加わる中、ローヴィはウローラに確認をする。 「このまま撤退して良いのですか? 多少危険でもディイス君の援護をしていた方が良かったのでは」 「我が艦が落とされれば全軍の士気が低下する。ディイス君も同じ意見であったことは分かっているだろう?」 「そうですが、ディイス君の機体だけでは火力不足だと当初から分かっていた事です。照射されるまで時間も無い中で……」  ローヴィの意見にウローラは「私の考えだが」と制するように口にした。 「シェス君たちは何か感じていた。あの衛星兵器が切り札などではなく、何者かに利用されているだけに過ぎないということを」 「利用? しかし、ディサピアランスが照射されれば」 「分かっている。だが、宇宙軍の士気が明らかに低い。ただ利用されているだけに思える。私からしても何かあるように思えるのだよ」  ローヴィは納得しようとせず「根拠が無ければ意味がありません」と苦言を呈する。これに対してウローラは「それはそうだな」と受け入れた。 「しかし、覚醒者の四人が共通して違和感を持っていたのは何かある。我々では説明できない何かが」 「その末路として撃たれたらどうするのですか? シェス君の作戦が外れ、艦隊の被害も大きすぎます。勘に頼りすぎる事は危険です」  ウローラは何も返せなかった。その時、艦を横切る機影が映り、クヨウが報告をする。 「ディサピアランスへ向かう機体確認……照合、リーヴァス・リペアです」
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