どんなことがあっても。

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突然降ってきた、雨。 「もー、最悪っ」 小走りをしながら、私は通学バッグを頭の上にかざした。でも、傘の役割は果たしてくれず、身体が少しずつ濡れていく。 ……まぁ、ちょうどいっか。……隠してくれるから。 私は諦めたように息をつき、走る速度を緩める。けれど、またさらに雨は強くなり、さすがにこれ以上濡れると風邪を引きそうだと辺りを見渡し、雨宿りができる場所を探す。すると、公園のトイレのそばに雨をしのげそうな小さな屋根があるのを見つけた。 微妙な場所だけど、少しの間雨宿りするだけだし、我慢しよう。 私は走り出した。 屋根の下にたどり着いた私は、息を整えながらバッグの中からハンカチを取り出す。 「あーあ。今日はホント、ついてないなぁ」 身体や制服についた雨をはらいながらそう呟いたとき、「うん、ついてないね」と、すぐ横から声が聞こえてきた。はっと顔を向けると、そこには大学生くらいの男の人がいた。 人、いたんだ……。全く気づかなかった。 「すぐやむといいね」 彼は人の良さそうなやわらかい笑顔で言い、私が頷くと、空に視線を向けた。 突然話しかけられてちょっとビックリしたけれど、怖い人ではなさそうだ。少しの時間だけだし、このままここにいよう。
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