ひりひりしつつもほんのり甘い序章

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「この前、おばさんがこっちに顔を出した時に、ばったり会ったんだよ。 今日から、ちいがこっちに来るって聞いたから、足がないだろうと思って、迎えに来てやったんだ」 ありがたく思え、というように、秀君はエラそうに言いながら、駅のロータリーに停車している車に向かって歩く。 何で、そんなに普通にしていられるの? 私は、7年かかってもまだ、こんなに気持ちが波立っているのに。 やっぱり、あの時のことは、大したことじゃなかったんだ。 「早く来いよ、ちい」 「ま、待ってよ」 あの頃と同じやりとり。 彼が先を歩いて、私が小走りに後をついて行って。 でも彼は、ちゃんと私を待ってくれているんだ。 ほら、今みたいにね、秀君。
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