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「よし、できた!」
私は、粗熱をとったあと、タッパーに蓋をして、保冷バッグに入れた。
今日作ったのは、鶏むね肉のミンチで作ったそぼろだ。
日持ちするので、小さめのタッパーに小分けして、いくつか用意してある。
おじいちゃんの病院に2,3日に一度の割合で顔を出すようにして、半月くらい。
私はカロリーや塩分計算などをしながら、一食につき小鉢一品の割合で、おかずを作っていくようになった。
少しでも、食欲がわくように。
でも、病院食の妨げにならないように。
おじいちゃんはこれに喜んでくれて、食費を渡すとまで言い出したんだけど、さすがにそれは断った。
私の食事も兼ねているし、ちょっと多めに食材を買い足すだけだから。
「でも……さと。
お前、会社を辞めたんだろう?」
現在の私は、絶賛無職。
就職活動も、まだしていない。
ちょこちょこと内職のようなことはしているのだけど。
「大丈夫よ。
退職金が少し出たし、もうすぐ雇用保険ももらえるから」
まだ、お勤めに出る勇気がないんだ、私は。
たった一度の失敗が、私をひどく臆病にしてしまっていた。
なので、自分にリハビリと言い聞かせて、こうしておじいちゃんのためにおかずを作る毎日なんだ。
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