かくかくしかじかの思い出話

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高校3年生なんて、ドキドキもワクワクもない。 去年までは青春一色だったハイスクールライフが、一気に灰色生活だ。 「そんなことを言ったって、仕方ねーだろうが」 パコンと後ろから私の頭をたたいて、(しゅう)君が言った。 「そうやって現実逃避をするのは、ちいの悪い癖だぞ」 D判定とE判定が並ぶ模試の結果を慌てて伏せながら、私は後ろを睨みつけた。 私の名前は、知香と書いて「さとか」と読む。 よく、「ちか」と間違えられるせいか、こいつは昔から、私の事を「ちい」と呼ぶんだ。 ちなみに、姓は野沢。 後ろの席で、恐らくA判定やらB判定やらが並んでいるらしい結果を見ているこの男は、緒方秀平(おがたしゅうへい)。 私は秀君と呼んでいる。 何かと一緒になることの多い腐れ縁だ。 昔は、もっと優しかったのに。 私の両親は共働きで、私と二つ上のお兄ちゃんは、幼稚園の頃から、おじいちゃんの家に預けられることが多かった。 小学校に入学してからも、学校を挟んで家とは反対方向にあるおじいちゃんの家に、よく遊びに来ていた。 ほとんど、毎日のように。 秀君はその隣の家の一人息子だった。 学区は違うので、小学校は別だったけど、同い年という事もあって、私たちはよく一緒に遊んでいた。
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