第一章

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「ん? 尾行といったらスパイ、スパイといったらこんな衣装だって映画で見たぞ」  黒のボディスーツにあれこれ装備した、いかにもスパイ!っていでたちでイケてるだろう。  我ながらハリウッド俳優も真っ青なイケメンぶり。胸を張る。 「……人には視えてないとはいえ、どうなんですかね……。流紋もお前、蝶ネクタイに眼鏡って著作権にひっかかるぞ。訴えられる、やめろ」 「ええ? 僕の見た目的に合うのになぁ。まぁ仕方ない、普通にホームズ風にしようか。剛力の真冬にTシャツジーンズってのもどうかと思うけど」 「オレの夏はまだ終わってないから。あ、東子様が服屋に入りましたよ」  俺たちはすばやく後を追って店内に入った。  神通力で視えないよう一種のバリアを張ってるんで、近づいてもバレない。東子は正体を見破る目を持ってるが、神の本気には敵わないさ。 「東子様、どうですかこれ。かわいいですわね~」 「雪華さん似合う似合う」  キャッキャと服合わせたり、コーディネート楽しんでる。ごく普通の女の子同士のショッピング。……それができるようになってよかったと思う。 「東子はラブリー系よりシンプルなのが似合うんだよ。イケメン女子だからな。あー、そっちより右のほうが俺好み」  雪華にテレパシー(神通力の応用。人間にやるとお告げになる)で伝え、それを買わせるよう仕向ける。 「バレたら殴られますよ……。尾行してる上に自分好みの服買わせたって」 「俺が買ってってもいいんだが、着てくれない。それにバレるわけないだろ。尾行自体はこれまで何度もやってて気づかれたことないんだ」 「はい?!」  ストーキング、って言いかけた剛力。 「どうりで手慣れてると思いましたよ」 「でなきゃ東子好みの店をいくつも街に作れるわけないだろ? 食い物は三食おやつ作って好物把握してるが、それ以外は調べないと無理じゃないか。聞いたって教えてくれないから、地道に後つけて観察して分析した」  何のために家事やってると思ってる。 「大丈夫ですか。ストーカーって言いませんかそれ」 「粘着質な蛇神の性質を発揮しまくってますね」 「本能だ」  それな。実は、確かに本能的なものもあるだろうが、けっこうな割合俺個人の性格だと思うんだよ。  もし蛇神全般がそうなら、俺と母は親父に捨てられてないだろ。親父は気に入ると手に入れたがるが同時に飽きっぽかった。
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