第一章

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 予想は当たりで、迷子だった。  すぐに雪華と二人で小学校へ連れて行き、受付係員へ。  どうやら役員・教職員に加えてたまたまブースを出していた消防署職員総出で探していたようで、かなりの騒ぎになっていたとみえる。保護者は泣きながら「ありがとう」と繰り返していた。  女児は親が兄だか姉だかの出し物を見ている隙に、勝手に離れたらしい。退屈で興味のある方ある方へとフラフラした結果、迷子になったわけだ。  先に帰っちゃったのかもと考え、小学校を出て家へ帰ろうとしていたらしい。途中車通りの激しい道があり、もし幼児一人で歩いていたら危ないところだった。  流紋がつぶやく。 「……何ていうか、東子様ってすごいですね」 「うん、何だろ、カン? 危険に対する察知力ハンパない」 「東子はずっと周囲からいわれなき悪意を受けてたんで、そういうのに敏感なんだな。無意識に周囲をよく見てる。もしこうなったら大変、って予想をたてて回避する癖がついてて、経験上それがまたよく当たるわけだ。例えば最初の高齢者は目の前の商品しか見てなくて、いきなり方向転換したら周囲に人がいて危ないかもしれないとは考えてなかった。自分が引いてるカート振り回すことになるって思ってもいない。あのまま歩いて行って急に振り向かれたらぶつかる……そう予測した」 「ああ、それでスピード調整したんですね。予想した高齢者のターンするタイミングとずらすため。タイミング見謝っても、当たらない程度に距離取って」 「二つ目の本屋もそうだったろ。三つ目の迷子も不安そうな態度でピンときた。自分に降りかかる災厄を防ぐため、悪意や不安感には人一倍敏感なのさ」  少し前までこの街の人間は嫌なことがあると全て俺のせいにしてきた。「ちょっと足ぶつけた」レベルからすごく重い悲劇まで。たとえそれが自分のミスで起きた事態でも、「あの邪神のせいだ」と責任転嫁する。そうやって自己防衛してきたのだ。  『邪神の監視人』だった加賀地家は直接それを受け取らされてきた。  少しでも減らしたい、やられたくないと思うのは当然だろう。結果、回避スキルと察知能力が向上した。 「……俺は先に帰る」  なんか無性に東子たちにうまいもん食わせてやりたくなった。  超特急で帰宅した俺は真っ先に台所へ向かった。
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