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第二章
「九郎、今日の夕飯どしたの? ずいぶん手が込んでたわよね」
「別に。レシピサイトで面白いの見つけたから作ってみたかっただけ」
夜、俺は当然のごとく東子のベッドでとぐろ巻いていた。蛇の姿なのは表情読まれないようにするためだ。
今、ちょっとブルーな気分なんで。
「何か元気ないね。寒いの? ほら」
ふわっとブランケットかけてくれる。
「これお土産。あったかいでしょ」
「……うん」
東子は優しい。
涙が出る。蛇の目にも涙。
いわば元凶の俺を責めたことは一度もない。
実際俺は悪事などしたことがないし、邪神など誤解なのだが、俺がそう思われて封印されることで姉さんや皆の気が済むならと訂正しなかった。牢につながれることを大人しく受け入れたのは俺自身だ。姉さんは満足したが、しかしそのために子孫を苦しめることとなってしまった。
―――俺のせいだ。
邪神として封印されることを受け入れなければよかっただろうか? しかし暴徒と化した姉さんや村人たちを鎮静化するにはああするしかなかった。俺が悪役になり、全て引き受けるしか。姉さんたちは『英雄』を妄信し、操られていたから。
どうすればよかったんだろうか……。
自責の念に押しつぶされそうになった俺を救ってくれたのは東子だ。「違う」と言ってくれた。
東子がゆっくり背を撫でてくれる。
「眠かったら寝ちゃいなさいよ。後では運んでおいてあげる。……やっぱペット用ベッド買っとけばよかったかな」
「ゴメンそれはナシで」
「そうすればわざわざ運ばなくていいし楽じゃない」
「俺はペットじゃなくてダンナさまだってばあぁぁ」
と言いつつ、東子が買ってくれたらたぶん大喜びで入って寝るだろうと、我ながら情けない未来を予想してしまった俺だった。
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