BANANA

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「俺の話はええとして、何で家出たいん?」 「…血の繋がれへんおっちゃんしかおらんから」 私は横山 昴に、家庭の事情とやらをほんの10秒程度で話した。 そうしてみると私の人生は10秒で語れるということに気づき、思わず笑いが漏れる。 「それ、笑い話?」 「ちゃうよ。けど私の人生は10秒で終わるなって」 「まだ終わってへんやん」 「屁理屈はええねん」 透明のポットから残りのミントティーを注ぐ。 洞窟のように薄暗いイタリアンの店内。 今日会ったばかりの友人。 このまま死んでも悔いはない。 「そや、連絡先教えて」 「いる?」 「いるやろ。引っ越し」 「あぁ…そうやった」 春先やから引っ越し業者にボッたくられるとしても、有り余る程のお金を私は持っている。 何の役にも立たんと思っていたおっちゃんが、おばちゃんから、両親の残してくれた通帳だけは、死守してくれていたせいだ。 だからこの子に頼まんでもええ。 けどそこは関西人やから、勿体無い。 立ってるもんは親でも使え。 立ってるもんは、横山 昴でも。
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