BANANA

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「アドレス、交換する?」 私は携帯を翳し、 「うん。来た。中園 葵。アオちゃんやな」 「ちゃんはいらん。ちゃんは嫌い」 ちゃんは距離を遠退かせる。 さんよりはましやけど。 友達ってこんな感じでいいの? ポッとそこだけ明るくなる画面は、 発光する寄生虫のようだ。 やがて昴がやって来て、昴と登録する。 登録を済ませたら、私の友達画面には、 昴と、悪魔と、おっちゃんとおばちゃんだけが残った。 店を出て、夜道を歩いていると、 カラスが食い荒らした後のゴミに出会う。 変色したバナナの皮が、 喜劇みたいに路上にあった。 ヒールの踵が避けきれず、滑りかけた私を、昴の手がコートごと掴む。 「危ないで」 「ありがとう」 私はその目に射ぬかれぬよう、顔を背けた。
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