14人が本棚に入れています
本棚に追加
「アドレス、交換する?」
私は携帯を翳し、
「うん。来た。中園 葵。アオちゃんやな」
「ちゃんはいらん。ちゃんは嫌い」
ちゃんは距離を遠退かせる。
さんよりはましやけど。
友達ってこんな感じでいいの?
ポッとそこだけ明るくなる画面は、
発光する寄生虫のようだ。
やがて昴がやって来て、昴と登録する。
登録を済ませたら、私の友達画面には、
昴と、悪魔と、おっちゃんとおばちゃんだけが残った。
店を出て、夜道を歩いていると、
カラスが食い荒らした後のゴミに出会う。
変色したバナナの皮が、
喜劇みたいに路上にあった。
ヒールの踵が避けきれず、滑りかけた私を、昴の手がコートごと掴む。
「危ないで」
「ありがとう」
私はその目に射ぬかれぬよう、顔を背けた。
最初のコメントを投稿しよう!