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「………あ………」
情けないことに、夢から覚めた俺はそれしか発せなかった。
夜明けの光が、カーテンの隙間から生き物のように伸びる。
時が止まったものと、止まらないもの。
その境目の世界で俺は、彼女が旅立ったことを、誰に教わるでもなく知った。
ナースコールを鳴らす気にもなれず、
彼女の髪をそっと撫で続け、
俺は何度も深呼吸をした。
同じ夢を見ていたのかもしれないと思うと、それすら幸せに思えた。
「今日は…そう言えば…大学行かなあかんかった。ちょっと…待ってて」
俺は言うと立ち上がり、朝の光を入れる為にカーテンを開ける。
札しかなくて、柏木に借りていた160円のことばかり思いながら。
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