lN AUGUST AFTET TEN YEAR

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横山先生… …………先生っ……! 夢の中で呼ばれ、ハッと気づく。 声の主はすぐ隣で、内巻きヘアーに、 しかめっ面を浮かべていた。 「ごめん、次の人呼んで」 「寝不足なんはわかりますけど、勤務時間中ですから」 憮然としながら、看護婦の西田(にしだ)さんはガラリと声色を変えた。 「相澤(あいざわ)颯太(そうた)くーん、どうぞ~」 中待ち合いのカーテンが開くと同時に俺は居住まいを正し、白衣の腕の隙間に、いつもの親子の姿を確認する。 「すみません。今朝またお腹が痛いって言うもんですから…」 母親の溜め息の、遥か下にある小さな肩。 顔色良し、どちらかと言うと嬉しそうな颯太君は、俺と目が合うと満足げに口許を緩めた。 とりあえず診察はする。 目の下の充血、喉を見た後、 聴診器をあて、最後は腹部を触診。 「お腹の風邪ですね。 昨日も出したお薬で大丈夫やと思います」 浮かない顔の母親が顔をしかめた。 「保育園、これからでも無理ですか?」 行ったところで何の問題もない。 颯太くんは風邪などひいていない。 けど俺は言う。 「ですね。 今日はお母さんがそばにいてあげる事が一番のお薬になると思いますよ」
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