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そして生きている限り、トランスジェンダーだろうが人生は続く。
俺は大学6年生の冬、国家試験を受け、
その後、研修医生活2年を過ごし医師になった。
小児科を選んだのは、柏木に
『おまえは小児科がむいてそうや』と言われたからだ。
柏木は内科を選び、この大学病院からそう遠くない総合病院で働いている。
たまにわざわざ時間を合わせて漫喫で会う。
今だ独身の姉貴ともたまに会う。
そして親にも、たまに。
けれど一通り、近況報告と雑談が終わると、皆困ったような顔をする。
腹に一物を抱えたような目で、何かあったらいつでもと、決まり事のように締め括る。
俺は医者で、仕事の能力も認められている。
なのにまるで小さい子を扱うように、俺をよく知る周囲の口調は優しくなった。
一昨年、千嘉と潤太郎の結婚式に出向いたイギリスでも…。
……ごめんな。今日は俺1人で。
そう告げると、千嘉は一瞬目を見開き、何かを鵜呑みにするように、静かに微笑んだ。
千嘉の為に移住を決めた潤太郎もまた、
同じように。
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