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「…これはどう云う?」
私が訊くと、布の合間から顔を覗かす。
何もかもがやはり滑稽で、昴の云うような変質者には見えなかった。
「あっ、まず名乗らないと。
迫田 潤と言います。
大学の2回生で、1週間前あそこに引っ越してきました!
カーテン、そう……カーテンがね、
実家の母親が通販で勝手に頼んでた、これなんですけど、色間違い?あ、番号間違いで。
面倒くさいから、暫くそれしといてって。
一回してみたんですけど、俺この色はちょっと……なので」
「……なるほど。それは分かりました。……で?」
「ここ今日、引っ越しが見えてですね、ベランダのカーテン無いなと。
女の子は防犯上見えたらまずいし。
あっ、もし買ってるなら、余計なお世話ですが」
怪しい、の「あ」は、とりあえず取り、自分の部屋に向き直る。
「……つまり、くれる?」
「あ、はい」
「……ただで?」
「あ、勿論」
「…うーんでも、買ったら返しますね。忘れてただけなんで」
借りるのであって貰うんではない。
普通ならカーテンは借りもしません。
寂しさの隙間に入っちゃうカーテン。
悪徳商法や無い事を祈る。
「……え?返さなくていいです。
俺、そのうち買います。じゃあ、おやすみなさいっ」
迫田 潤は、隙間から何とかカーテンを全て押し込むと、姿を消した。
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