CHERRY

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「全然知らん奴にカーテンやるとか、 俺やったらせえへん。そして、受け取らへん。友達やから言うけど、そいつ危険」 昴のひとしきりを聞き、ドライカレーを一口食べる。 微妙に食べる量が増えているのは、 友達というもののせいでしょうか? 「……どんなやつ?そいつ」 「どんな?見たやん」 「……あれは遠目でしょ?近くで、どんなか」 「うーん。意外に可愛い顔してた。アイドルグループに例えると、昴が静で、迫田君が動みたいな」 「迫田君な…。 そのうちそいつがブレスレットを持ってきたりして」 「ブレスレット?」 「魔除けブレスレット。 お値段なんと10万円、とか」 「はは、アホらし」 「ってアオ買いなや」 昴は少しだけ笑う。 「元気ないやん。 彼女はとケンカでもした?」 「人の恋バナ好き?」 「全然」 「やんな、俺も。けどなんかあったら教えろ。ブレスレット持ってきたりとか」 「はは、了解」 食事を終え、昴の黄色いワーゲンに乗り込む。 速度と共に街のネオンが流れる様は、 熱帯魚の尾びれに似ている。 ボードに置いた昴の携帯が振動すれば、 事故渋滞に巻き込まれた。 【いずみ】という着信名を横目で見ると、 私はここで結構と車を降りた。 事故車はセンターラインを越えたが、 私と昴は越えれない。 グシャリとひしゃげた事故車体になるのですら、始まりが遅すぎたから。 ー 先生、(いちご)は果物やで! こいつ、嘘ついてる!ー 小学校のクラスメイトだった小野田(おのだ)の声が、耳元で何度も甦った。
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