CHERRY

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昴と別れ乗り込んだ電車の窓の外には、 つい先程まで一緒にいたビルの群れが(そび)え立つ。 ふいに声をかけられ振り向くと、 私達の話題の中心にいた迫田 潤が笑みを浮かべた。 「びっくりした。電車、乗るんですね」 「ふふ。私、電車乗らなさそう?」 「いや、そういう意味やなくて、電車で知り合いに会うのって、俺、なかなか無いもんで。あ、そうや、カーテン付けてくれてるんですね。どうですか、具合は?」 迫田 潤は耳につけていたヘッドフォンを外すと、リュックにそそくさとしまいこんだ。 「ありがとう。役立ってます」 「それは良かった。実はあの翌日、文句言うたせいかさっそく親が違う色のカーテン送ってきて。今度は抹茶色なんですよ」 「知ってる」 軽く笑うと、迫田 潤は照れ臭そうに髪の毛を軽く掻いた。 「あの、突然なんですけど、ブレスレットとかします?」 「えっ…」 「……そんな驚かなくても。 俺、芸大の学生で、こんなん作ってて」 迫田 潤はリュックの中から、 奇妙な形が幾つも連結した、ブレスレットを取り出した。 「彫金って言うんです。指輪とかも作るし」 「へえ、かわいい」 「興味あったら作って…えっと名前は」 「中園です。中園 葵。葵って漢字やけど、あおって読むの。迫田さんより3つ上かな」 「へぇ、珍しい。良い名前ですね。 3つお姉さんかぁ。じゃあ中園さん。電車で会った記念にどうぞ」 「え、あ、ありがとう。ただで?」 「はい、勿論!」 迫田 潤が弾けるように笑う。 それなのになぜか今すぐ昴に、 このことを報告したくなった。
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