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迫田 潤には、社会人の兄が1人いて、
実家は小さなスーパーをやっている。
製作に時間がかかるから、大学からそう遠くないマンションを借り、家賃はバイト代で何とか払っている。
バイト先はスターバックスコーヒーなことや、お兄さんにはお喋りな彼女がいること。
駅から歩く道すがら、びっしりと聞き、
少し疲れる。
『中園さんのことは…?
喋ってるの、俺のことばっかりや』
マンションの前で迫田君は言った。
ー 私?
実は病気でもうすぐ死ぬよ ー
その言葉を飲み込み、にっこり笑う。
なぜなら言うほどの事でもないから。
『また、今度』
私は言い、彼を見送る。
リュックの背中が、何だか愉しげに階段を駆け上がっていく音を聞きながら。
【ちゃんと帰った?明後日あいてる?】
昴からメールが来ていた。
【空いてる。そうそう、偶然電車で迫田君に会ったら、ブレスレットあげるって】
【マジで!?ヤバイやん。断った?】
【貰った。自分で作るやつみたい。芸大生やから】
【……?】
【ただやって】
【へえ、じゃあ次は仏像売られかけたら言うて】
【アホちゃう?おやすみ、また連絡して】
【あいよ】
昴とのラインラリーは終わり、床に転がる。
シャワーを浴びるつもりがうたた寝をしてしまい、目覚めてふとエアコンに目をやると、妙な黒い模様を見つけた。
じーっと見れば、向こうも見ているような気がする。
お尻を拠点にそろりと起き、気配を消すものの触覚が動いた。
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