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翌朝、ベランダの強風に迫田 潤の洗濯物がはためく音で目覚めた私は、ベッドから這い出した。
芸大生らしく、部屋に漂う鉛筆の芯の匂いと、迫田君の書き置き。
【バイト行ってきます。鍵はポストにいれておいて下さい】
死にます、と言われてるけど、実は其ほど症状があるわけではない。
だから宣告は雷鳴のようで、去ってしまえば忘れようとする事もできる。
闇の中で、何の下心も無いような迫田 潤。そんな天然記念物のような男の子と話していると、私は病気ですら無いような気がした。
泥だらけの体で、乾いたばかりの洗濯物に顔を押し付ける行為と、彼と時間を共にするのとは似ている。
でも今は、その泥にも気づかないふりをしていたい。
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