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その日の午後、聞いていた店舗に行くと、
ガラス越しに働く迫田君が見えた。
迫田君は、カウンター前の猫目娘と何やら親しげに話し、私に気づく様子もない。
やがて新たな客が来店し、視線を上げた迫田君が私に気づき、動揺する。
1度スタッフルームに消えた迫田君は、
店の裏口から出てくると、私の前で忙しなく汗を拭った。
「びっくりした。来るとか」
「突然ごめんね。新作フラペチーノが飲みたくなって。ここが一番近かったし」
猫目娘は店の中から、私を凝視している。
「あ、そうなんや。やったら中に」
迫田君が言い終わらないうち、
猫目娘がこっちに向かって来る。
「あの子は迫田君のお友達?」
私が訊くと、迫田君が振り返った。
苦虫を潰したように横顔を歪め、
「いやいや、あいつは」と首を振る。
猫目娘はそれでも躊躇することなくやって来て、
「春田千嘉です。
潤の実家の隣に住んでます」
と言うと、威嚇するようにウェスタンブーツの踵を鳴らした。
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