2人が本棚に入れています
本棚に追加
響がそこのSNSを利用するそもそもの理由は、現実世界では口にすることが出来ない過去の自分についての話を、仮想空間上でふいに綴りたくなったからというものだ。
それと、自分のことを全く知らない誰かに、まっさらな状態で自分の話を読んでもらいたいという気持ちが、始めた当初は漠然とあった。
なるべくその時の自分の気持ちを思い出しながら、忠実にその時にあった出来事を淡々と書き出していく作業を始めて3ヶ月も過ぎると、自分でも驚くぐらい、いつの間にか1つの小説作品として体を成していた。
そして、ただ自分の過去の話を書いていただけにも関わらず、いつの間にか熱心なファンのような存在もちらほら出始めた。
自分の日々のキラキラとしたワンシーンを収めた写真や言葉が連ねられている訳でもない。
それどころか、それとは真逆の内容を載せていたのに、いつしか内容を更新する度に、コメントを送ってくれる人も現れるようになった。
基本、このサイトに登録してからずっと、毎日更新している。中には、ずっと丁寧な感想や意見を送ってくれる人もいたりする。
それらを読んでいると、過ぎ去ったあの頃にはもう戻れないし、人生をやり直すことは出来ないけれど、心に刺さって痛いままだった心が癒されていく。それに現実世界でも、前より少し明るく生きられるようになった気がした。
昨日書いた分の文章をチェックし直して、新たに書いた分をアップする。すると、ほどなくして響が書いた文章に対してのコメントが飛び込んできた。
そのコメント主のアイコンが、いつもの見慣れた三毛猫のイラストであることに、響は自分の頬が自然と緩むのを、少しくすぐったく感じた。
ハンドル名はHOME´Sさん。最近いつも1番にコメントを書きこんでくれる人だ。ハンネの由来は、大好きな推理小説の主人公の名前だと以前質問したら教えてくれた。ただ、性別は未だに不明だ。
最初のコメントを投稿しよう!