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よくよく聞いていれば、どうやら一人ではない。
二人以上…足音の軽さからして子供が一人いるな。と、カルシンの元にどんどんと近づいてくる音を冷静に分析していると、ぱらりと目隠しが外された。
闇に慣れていた目が唐突な石油ランプの光を受けて、カルシンの瞼がぎゅっと閉じられる。
続いて口枷も外され、溜まっていた唾液は飲みきれず、とろりと口の端から垂れてしまった。
嫌がる瞼を無理やり開き、ガルシンは瞬きを繰り返す。
目の前には純白のマントに身を包み、厳かな顔をして佇む色黒の少年と、筋骨隆々の背の高い男が二人、こちらを見据えていた。
カルシンが声を出すのを遮るように、少年から甲高くも凛とした、衝撃の言葉が吐き出された。
「我が名はエンセライル。国家であり、国民であり、民意である」
堂々とのたまう少年の顔に、不安や恥じらいなど一切なく、ただひたすらに自分を信じている。
「我を殺める事すなわち、この国を殺める事と同意。
我に仇なす事すなわち、この国に仇なす事と同意。
この事をわきまえ、我に接せよ」
何度も繰り返した台詞のように、少年の口からはすらすらと言葉が滑り出した。
「我が国に足を踏み入れたからには、汝は我が子も同然。
これからは、我のため、この国のために尽くせ」
一つ息を吸って、少年は懐からそっと大切そうに何かを取り出す。
それは、何かの破片のようであった。
ランプの小さな光を反射し黄金色に輝いたそれはしかし、破片というにはあまりにも力を持ちすぎていた。
「遥かなる神の遺物を持ちし我に、今こそ力を」
少年の静かな声に呼応するように、破片はさらに輝きを増した。
あまりにも美しいその光景に、一瞬見とれたカルシンの眼球は次の瞬間、くるりと回転する。
一気にカルシンの意識は、光の奥底へと沈んでいった。
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